例えば君に恋しても
「私とデートしたことを新一さんに伝えて彼を傷つけるって魂胆じゃないよね?」
「さすが美織、そんなこと俺にも思い付かなかった。
それだけ兄貴に愛されてる自信も過剰で尊敬に値するよ」
いちいち腹が立つ。
仁と一緒にいるとこどみたいな言い合いばかりで嫌になる。
「言い返してこないの?」
「あなたを相手にするのが面倒に感じた。」
で、また、怒るんでしょ?
そう思い、身構えてみたけれど、仁は大人しく私をみてるだけ。
・・・逆に拍子抜けする。
早く水族館に行って早く帰りたい。
車はまだ来ないかな?と辺りをみわたしていると
突然、服の裾が突っ張った。
仁だ。
仁がなぜだか、私の服の裾を軽く引っ張っていた。
「なんか用?」
「兄貴にもいつもそんな態度?」
「こういう時もあれば違うときもある。」
「兄貴に接するのと同じように俺にも接して」
「・・・尖ってる私がいいんでしょ?」
「・・・お願い。」
さっきからコロコロとまるで人格が入れ替わってるような異様な態度の変化に言葉を失った。
これも策略?
それとも・・・?
傷ついたように眉を下げるその表情は
私の知ってる仁の顔ではない。