例えば君に恋しても
確か市橋財閥の跡取り候補は三人。
長男の新一さん。次男の仁、三男の邦弘
現代表取締役の当主である父親が重度の病に倒れた途端に、この三人の跡取り争奪戦が始まってるとか。
全部ネットで調べた情報だけど・・・
「あなたが私に何の用?」
じんじんと痛む手首の痛みに堪えながら、キッと彼を睨み付ける。
すると彼は愉しそうに笑った。
「俺の秘書がね、最近、兄貴がなぜかこんなところのこんなちんけなマンションの一室を購入したなんて言ったから、不思議でさ。」
「・・・購入?」
「そっ。そしたら、住んでるのは兄貴じゃなくて君だった。」
「購入?このマンション、賃貸じゃなくて分譲なの⁉」
「ん?え、あ、うん。
で、君は兄貴のなんなの?」
「別になんでもないわよ。てか、購入って本当に?本気で言ってるわけ?間違いじゃないでしょうね⁉」
今度は私が空いてる方の手でこの男の胸ぐらを掴み睨み付けた。
「ん?ちょっと待って、君、何?本当に女?」
慌てて私の手を払いのけて胸元の皺を直す彼にじりじり詰め寄る。
「あんたの馬鹿兄貴は、本気でこのマンションを購入したの⁉たかだか100円のお礼で⁉
あの馬鹿男は私に借りたと言ったのよ?
でも、購入したのね⁉」
鬼気迫る勢いで何度も同じ質問をする私に、彼はもう、後ずさるだけだった。