夕暮れに染まるまで
夕暮れに染まるまで
 外はもう、すっかり夏になっていた。

 まだ昼前だというのに目眩がするほど眩しい日差しがアスファルトをじりじりと照りつけている。

 逆上せた顔を上げれば、どこまでも続くような坂道の先にまだ目的地は見えなかった。

 今日は八月の何日なのだろう。ここしばらく閉じこもっていたせいで日付の感覚がすっかり狂っている。

「夕輝(ゆうき)―! 遅いよー!」

 俺の数メートル先を歩いていた透花(とうか)が振り向いて叫ぶ。

「そんなにのんびりしてたら日が暮れちゃうよ」

「しょうがないだろ、この暑さなんだから。大体なんでお前はそんなに元気なんだよ」

「夕輝とは鍛え方が違うんだよーん」

 言うなり透花は軽やかに坂を駆け下りてきて、うだうだと歩く俺の腕をぐい、と掴んだ。

「ほら、さっさと歩いた歩いた」

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