キラキラmemoriy




その夜

友逢は1人家にいる帰ると、すぐさまノートを開いた。
机の上に置いてある、分厚い辞典のようなノートだ。

そこには、英語で書かれた文から、平仮名だけで書かれた文字もある。

そのノートの新しいページを開くと、友逢はペンを取り、文を書き始めた。

❮今日、新しい友だちができました。市川千暖ちゃんと柚木莉菜ちゃんです。千暖ちゃんことちはちゃんは、とてもボーイッシュ。明るくて、話しやすくて…とてもいい子です。莉菜ちゃんこと柚ちゃんは、大人っぽい子。可愛いメイクしてて、お姉ちゃんみたいに頼れる人です。❯

夢中になって書いている途中。
友逢はふと手を止める。

「ゆーあちゃん、少しよろしいですか?」

ドアをノックする音に気づいたのだ。
壁に固定された鈴が音を鳴らす。

「あ、うん!!」

慌てて閉じたノートを、隅に寄せたところで、ハーフの顔立ちをした男性が入ってくる。

「暖かい紅茶をお持ちしました。」

綺麗な言葉使いだが、まだ訛りのある発音。

「ありがとう、ニコ!」
「いいえ。お風呂に入る時、声をお掛けください。」
「うん。もうすぐ入るよ」

机の上に、紅茶を置いたニコは、静かに部屋を出る。

「いい香り!」

ティーカップを口に近づけてから1口、ゴクリんと飲んだ友逢は、あの辞典のようなノートを開く。

続きを書き始めたのだ。


❮とても楽しいです。早く明日にならないかな。早く、みんなでいることが普通にならないかな。❯

そこまで書いて、手を止めた。

まだ2日間しか学校に通っていない。
全部が新しい。
この、新しい生活が、普通になってほしい。
当たり前になってほしい

そしてずっと、ずっとこのままで……





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