キラキラmemoriy




放課後。

「さようならー」

新学期恒例の、クラス役員決めを終えたクラスは、何となく安堵に包まれていた。
体育祭実行委員になった市川と熊谷とはバラバラに帰ることになり、
さらに熊谷はバスケ部に入ると言っていたので朝も放課後も忙しくなりそうだ。

「あ。またか…」

鳴り続けるスマホの画面を見て、柚木は深いため息をついた。

「どうかしたか?…でないのか?」
「あー…」

異変に気づいた咲籠は、柚木に声をかける。
今日のお昼や授業の合間に電話が絶えずかかて着ていたのを見ていたのだ。

中学のときも、頻繁に電話がかかってきていたがそのときとは違う、嫌そうな反応だ

「ちょっとね……元彼がしつこくて。」

電話を切ってから、柚木はいった。

「ストーカーとかされてんのか?」
「いや、そんなヒドイ訳じゃないし。大丈夫よ。」

そう言ったところに、また電話がかかってきた。
微かに驚き、柚木は微妙な顔をする。

「いやねー…」
「柚ちゃん……元彼っていう人は友だちなの?」
「「え?!」」

すっとんキョンな友逢の質問に、2人は耳を疑う。

知らない…?
いや、これ素で聞いてるんだよね?
だとしたら高校生にまで知らなかったということ?
今まで友だち付き合いとかどうしてたんだ!?
恋バナとかしてこなかった?!


「友逢、そういえば…ご両親がハーフだと言ってたわね。」
「うん」
「どことどこのハーフ?」

ここまで語彙力がないってなると、もしかしたらどちらかの両親はアジア系で、日本人ではないかもしれないわね…

「母がノルウェーと日本、父がフィンランドとウアメリカ!」
「日本人の血は薄いのね」

やっぱり!
日本人の血は相当薄い…はず。
でも、見る限り日本人に凄く近い顔をして……

「うん……あ、でも、アメリカ人のおじさんは日系人なんだー。だからmeは日本人ぽい顔してるんじゃないかな。」

友逢は、なぜそんなことを聞かれたのか不思議だった。
首を傾げながらも、丁寧に言葉を選んで話していく。

「へぇー…日本語は母から?」
「…両親、日本語も英語もペラペラだっrたよー!だから自然に!」

「そういえば、友逢はどこ中出身な……」
「あー!!忘れてた!!」

話しかけた咲籠の言葉を遮って、友逢はカバンをあさりだす。
手に取ったのは、真新しいスマホ。

「じゃぁーん!!買ってもらった!」

自慢げに見せたそのスマホには、手帳型のカバーがついていた。
白をベースにした、花柄のスマホケースだ。
さらに、ちゃらちゃらと音の鳴るイヤホンジャックをつけている。

「毎日、たくさん写真撮りたいなぁ…!!それでね、アルバム作るの!!」
「いいわよー沢山とりましょ!!」
「うん!!」

のりのりの2人に咲籠が一言いう。

「初写メは、みんながいいんじゃねーの??ほら、熊とちは入れて5人でさ。」
「あーそうね。」
「みんなで…!! うん!!」

スマホを大事そうに持って、素直に頷く友逢。
その笑顔に涙が隠されていたのを、ふたりは知らなかった。


< 8 / 13 >

この作品をシェア

pagetop