うつりというもの
第11章 エピローグ
翌日、遥香もすぐに退院し、教授と二人で広田家に資料を返しに行った時、新たな資料が見つかった。

その資料の中で、『うつり』の語源についての考察が書かれていた。

『首うつし』と呼称する妖怪がいた地域もあり、元々はそっちだったのではないか、それと首が移っていくことと、『身代わり』の意味もある『うつり』と混ざって、ただの『うつり』と呼称されたのではないかということだった。

本当は『首を移すもの』の方が恐ろしいが、人々にとっては首だけの方が恐ろしい。

時が移ろえば、そっちの方が広まるかもしれない。

答えは出ないが、教授もそうじゃないかと思っていた。


教授と遥香は、研究室に戻ると陸奥那美姫神についても調べたが、その名前の神が祀られていた神社の名が一つだけ青森で見つかった。

ただ、その神社は明治の頃には廃れて無くなっていた。

遥香は、複雑な気持ちであの円らな瞳を思い出したのだった。

その瞳だけでなく、姿、そして声も、喋り方も、全て陸奥那美姫神の意思を受け取った側のイメージなのだろう。
< 179 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop