うつりというもの
病室のドアがそっと開いて、三田村、忍、季世恵が顔を出した。

「あ、遥香ちゃん!気が付いた?」

三田村が一番に入って来ようとしたが、

「おい、あんた、馴れ馴れしいって」

忍が敵意を露わにして、それを邪魔した。

二人がごちゃごちゃやってる横から季世恵が側に来た。

「渕上さん、無事で良かった」

「心配お掛けしてすみません」

「ううん、いいの」

季世恵もホッとしたように笑っていた。

遥香は彼等にもどんな状況だったか話した。


やはり同じ様に戸惑っている彼等を横目に、

「あの、田島さんの首を供養すると約束したんですが」

と、遥香は教授と赤井を見た。

「ああ、それは検死の後、こちらでやります。というか、永凛寺に頼みますので」

赤井が言った。

「そうですか。それなら安心です」

遥香は微笑んだ。

「えっと、陸奥那美姫神って言ったっけ?」

教授が遥香を見た。

「ええ」

「やっぱり、永凛寺の住職が言ったように、神様だったわけだ」

「そうですね。だからこそ、妖気を感じなかったんですね」

「幼な神だから、悪気がなく、ただ首のために身体を探してやっていたのか…」

「恐ろしいですね」

赤井が言った。

「ええ、本当に恐ろしいことです」

教授が頷いた。

「まあ、それを『ただの人』である渕上さんが説得して?止めたというのが、またある意味恐ろしいですね」

赤井が笑った。

「いや、全く」

教授も他のみんなも笑った。

逆に、悪霊とか妖怪ではなく、神で良かった。

遥香はそう思っていた。


「これで、死の連鎖は止まったんですよね?」

遥香は教授と赤井を見た。

「そうだな」

「そうですね」

教授と赤井が頷いた。

そこにいるみんなも、こんな事で解決した事には戸惑っていたが、死の連鎖がこれで止まったということに心からほっとしていた。
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