うつりというもの
「で?死因は?」

鑑識が来るまであまり触らないようにしながら、その遺体を見ていた三田村に赤井は声を掛けた。

「えっと、首を絞められた訳でもないし、特に外傷もないみたいですけど…」

「こんな場所だ。自殺じゃないだろ」

赤井は自分でそう言いながら、何となく足跡が少なすぎると感じた。

自分達は靴にビニールを被せているので「足跡」には入らない。

すると、もしかして仏さんと第一発見者のだけじゃないのかと思えた。

赤井は、遺体を自分でもじっくりと見てみたかったが、無意識に勘が働いているのか、なぜか傍に近付くのを躊躇していた。

「いや…別にどこからも血が出てるわけでもないですし、床に血痕もないし、毒か?」

そう言いながら、三田村が口の中を調べようと顔に触れた時だった。
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