【完】螺旋のように想いを告げて
「ま。今度、一緒に写真撮るから」
「今更、母さんと写真かよ」
「思い出を作らせなさいよ」
思い出か。咲良もよくそんなことを言っていた。
女っていうのは、そういうもんなのかな。
「ねえ、亮。昔はスカートめくりなんてして面倒な子供だったけど」
「いつの話だよ。もう忘れてくれ」
「ふふ、子供のことはいつまでも覚えてるもんよ。とにかく」
母さんは洗う手を止める。つられて俺も皿を持ったまま母さんを見た。
水の流れる音が響くくらいに、一瞬静かになって緊張する。
「亮はまだ3ヶ月。1歳にもなっていなかった」
何の話だろうと考えて、俺が今まで知らなかった離婚のことだとわかる。
俺は聞きもしなかったし、母さんも喋ろうとしなかった。お互いにいい話でないことがわかっていたから。
それを今になって話すなんて、母さんの心が少しは癒えたと思ってもいいんだろうか。