【完】螺旋のように想いを告げて

 あちこち指をさしては、あの時はこうだったとか。あっちで何があったとか話し始める。



 繋いだ手に力が入り、いつの間にか咲良の方が先に歩く始末。
 相変わらず、自分の感情のままに動く。




「でも、入れるの?」

「まあ、行ってみる価値はあるだろ」




 突如、ふいてきた風が肌を刺す。真っ白な桜の花びらが俺の顔にあたる。



 驚いて立ち止まりそうになる足を無理やり進め、桜の警告を俺は見ないことにした。



 知っているから。
 これから俺がやろうとしていることは、とんでもない賭けだ。



 禁を破るようなことになるかもしれない。
 それでも、俺は終わらせるために決意したんだ。




「――――螺旋」




 桜が空に舞い上がり、風がやんだ。
 奇妙なほどに、辺りは静かになる。




「行こう、咲良」

「……うん」




 俺は絶対にこの手を離さない。
 失いたくはない。
 でも、このまま終わるのは嫌だ。

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