【完】螺旋のように想いを告げて
思い出眠る場所で
***
「気をつけろよ」
「ちょっと速いって」
「シッ! 誰かいるかもしれないから、静かに。そして速く」
「亮ちゃん、注文多い」
明かりの全くない階段はかなり危険だ。適当なスリッパを履いてきたものの、暖房のない室内は寒い。
そこを歩かせるなんて、ちょっとどうかしていると自分でも思っている。反省はしてないけど。
「階段ってこんなに狭かったかな」
静かにしろと言っているのに、喋ることをやめない。咲良の声でバレたらどうするんだ。
久しぶりの高校。たまたま来賓出入口が開いていてラッキーだと思い込み、こっそり忍び込んだ。
3階まで来ると窓からの明かりが廊下を照らしていた。
月明かりだ。残念ながら満月じゃないけど、綺麗なことに変わりはない。