【完】螺旋のように想いを告げて


 誰よりも祐介は傷ついているはずだ。
 慰める言葉なんて見つからないし、だいたい慰めるっていうのも違う気がする。



 俺は祐介に合図を送ってから窓を離れる。



 階段を降りる足が、いつになく重たくて転びそうになる。俺はこんなに弱い奴だったのかと改めて思う。




「亮。亮!!」




 呼ばれていたことに、1階に着いてから気づく。
 そんな俺の様子に、母さんはすごく不安そうな顔をする。




「亮。あなた……」

「大丈夫。祐介が来てるから、行ってくる」

「そう。亮、後で手伝ってほしいことがあるから」

「わかった」




 何か言いたそうにしていたけれど、俺は無視して玄関で靴を履く。
 いつもの靴なのに上手く履けなくてイライラする。



 何もかも上手くいかなくて、泣きたくなる。
 泣けない自分も悔しくて、文句を言う相手も見当たらなくて苦しい。




『亮ちゃん!』




 幻聴だ。
 ドアの向こうで風が、木の葉を撫でていく。擦れる音に惑わされる。咲良の声が聞こえた気がした。

< 54 / 283 >

この作品をシェア

pagetop