【完】螺旋のように想いを告げて
誰よりも祐介は傷ついているはずだ。
慰める言葉なんて見つからないし、だいたい慰めるっていうのも違う気がする。
俺は祐介に合図を送ってから窓を離れる。
階段を降りる足が、いつになく重たくて転びそうになる。俺はこんなに弱い奴だったのかと改めて思う。
「亮。亮!!」
呼ばれていたことに、1階に着いてから気づく。
そんな俺の様子に、母さんはすごく不安そうな顔をする。
「亮。あなた……」
「大丈夫。祐介が来てるから、行ってくる」
「そう。亮、後で手伝ってほしいことがあるから」
「わかった」
何か言いたそうにしていたけれど、俺は無視して玄関で靴を履く。
いつもの靴なのに上手く履けなくてイライラする。
何もかも上手くいかなくて、泣きたくなる。
泣けない自分も悔しくて、文句を言う相手も見当たらなくて苦しい。
『亮ちゃん!』
幻聴だ。
ドアの向こうで風が、木の葉を撫でていく。擦れる音に惑わされる。咲良の声が聞こえた気がした。