Dance in the rain
それはツヤツヤ卵にくるりとくるまれた、見事なオムライス。
お皿が揺れるたび、卵がふるふるって動いてる。
「おおおおいしそぉっ!」
飛行機を降りてから何も食べてなかったことを思い出して、
一気に色気より食い気に思考がシフトする。
そんなあたしの横で、彼がぼそりと言った。
「それ食ったら、これに懲りて、ちゃんと家帰れよ」
そして、席を立つ。
え?
「あの……?」
「どうせ、恋愛か進路か、親に反対されて家出、ってとこだろ?」
スーツケースを指して、バカにしたみたいに言い放つ。
「いや、別にそういうわけじゃっ」
首を振るあたしを遮って、彼はどこか投げやりな口調で続けた。
「この世に必死にしがみつく価値のあるもんなんてねえよ。恋愛にしろなんにしろ、な。適当に、ゆるくやっときゃいいんだよ。これ、先輩からのアドバイスな。よく覚えとけ」
は……?
麗しいカーブを描く唇から吐き出された言葉は、その見た目とは真逆の毒針を含んでいて。
その毒が、あたしの耳へ、脳へ、じわりと染み込んでいく。