Dance in the rain

何で泣いてるんだろう。叫んでるんだろう。
あたしは。
こんな初対面の男に、ムキになって。何を……

でも、頭のどこかで、あたしはちゃんと理解してた。
トリガーを引いたのが、彼の言葉だってこと。

人生に、しがみつく価値のあるものなんてない?

じゃあ、あたしがやってきたことは?
あたしが目指していたものは?

もがいて、足掻いて。結局何もつかめなかったあの日々は。
なんだったの?

彼はたった一言で、あたしの今までの人生全部見事に否定してくれて。
だから。

だから、叫ばずにいられなかった——


そいつは、しばらくあたしを見つめていたけど、すぐに興味を失ったみたいに、ふいって視線をそらせた。

「……何熱くなってんだよ。めんどくせえ女」

そして、再び歩き出そうとする。

カッとなって、あたしは飛び出した。
「待ってってば!」
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