Dance in the rain
「待ちなさいよっ!」
傘をさして歩いていたその背中に、叫んだ。
今や、雨は叩き付けるみたいに降りしきっていて。
濡れた交差点は、街灯の光を反射して、キラキラ、ありったけの宝石をちりばめたみたいに輝いていた。
その光の中に、彼は立っていて。
振り返って、傘の下からあたしの姿を認めると、呆れたように眉をひそめた。
「おま……っまた濡れ」
濡れることなんかどうでもいい。
あたしは、雨の音に負けないように、声を張り上げた。
「しがみついて、何が悪いの!? 必死になることって、そんなにいけない!?」
「は?」
「あんたにはないわけ!? 全部捨てても、何を犠牲にしても、あきらめても、欲しいものって、求めるものって、あんたにはないわけ!?」
雨粒に交じって、しょっぱい味が口の中に広がっていく。
涙だ。
涙が、雨に溶けて落ちていく。