Dance in the rain
2. 始まりのrainy night
四方を囲む鏡とバー。それから、フローリングのフロア。
それが、世界のすべてだった。

そこで、あたしは毎日踊り続けた。

——花梨ちゃんは本当に踊るのが上手ね。
——素質があるのね。飲み込みが早いわ。

あの頃は、踊るのが楽しかった。
皆が手を焼く複雑なコンビネーションも、あたしは難しいなんて思ったことなくて。呼吸をするように、自然に体が動いた。

みんなが、あたしを褒めた。
コンクールでも上位の常連だったあたしは、もっと踊りたくて、
両親を拝み倒して高校を止めて、カナダへ渡った。
もっともっと、あたしの世界は広がるんだって、疑わなかった。


いつからだろう。

踊りたい——want dance

から

踊らなきゃ——must dance

に、変わってしまったのは。
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