Dance in the rain
3. 天使の梯子
『友達のところに? じゃあこっちには戻らないの?』
「うん」
『お金は大丈夫なの?』
「大丈夫。バイト、探すから」
『そう、じゃあお父さんにもそう言っとくわ』
「うん、よろしく。じゃあね」

通話を切った。
以上、報告終わり。

あっさりしてんな、相変わらず、うちの母親は。
関心がないんだよね、そもそもあたしに。
高校中退した時点で、もう理解できない子って諦められた気がする。

実家に帰らずに済んだことを翔也に感謝しながら、スマホを操作してラインを立ち上げる。
送ったスタンプ、翔也は見事に既読スルーだ。
ま、想像してたけどさ。

あたしはぬるくなったコーヒーを、ぐびぐびって飲み干した。

そこは、昨日来たカフェ“雨音(あのん)”。
オムライスのお金を払ってなかったことに気づいて、お店の名前検索したら、
四ツ谷にあって。なんと翔也のアパートから徒歩圏内だったんだよね。

小さくなって店を覗いたあたしを、お髭のイケメンシェフも、生成りエプロンの彼も、「救急車来たから心配してたんだよ。無事でよかった」って笑顔で迎えてくれて。
お金は受け取ってくれなかったから、もう一度オムライスをオーダーして、たっぷり堪能したところ。
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