Dance in the rain
あたしは数少ない地元の友達を思い浮かべた。
もうママになってたり、高卒で就職してバリバリ働いてたり。
道はいろいろだけど、みんな前に進んでた。キラキラ、まぶしいくらいに輝きながら。
あたし一人……どこにも行けず、何も変わらないまま。
お金も仕事も。友達も。恋人も。
あたしには、何もない。
何やってんだ……あたしは。
「仕事、探してるの?」
出し抜けに話しかけられて、あたしはビクッて振り返った。
あの生成りエプロンのイケメンが、すぐそばに立っていた。
あたりを見回すと、さっきまでの賑わいはどこへやら。
店内にはあたし一人だけ。
うわ。いくら居心地いいからって長居しすぎたかな。迷惑だったかも!
「ご、ごめんなさい、すぐ出ますねっ」
「あ、ううん、そういうつもりで声かけたんじゃないんだ」
ソフトな口調で制すと、「座っていい?」って、あたしの前に腰掛けた。
「事務系希望なの?」
女の子みたいなほっそりした指が、情報誌をつまみあげた。