私と二人の物語
第5章
それからしばらく私たちは、いろんな場所をその2年前の順番で巡った。


植物園。

悟に最近覚えた花言葉をたくさん説明した。

悟は花粉症じゃない。

私も。


映画館。

悟は涙もろかった。

ハンカチを貸した。

悟が「洗って返すよ」と言ったけど奪った。


ハーバーランド。

悟は骨董屋もやっているから、雑貨が好き。

アイスは抹茶系が好き。

海も好き。


南京町。

悟は何度か炒飯を作ってくれたけど、かなりこだわっている。

それも全部種類の違う炒飯だった。

だから、悟は炒飯に厳しい。


摩耶山。

本当は六甲山よりこっちの方がすごい。

二人で言葉なく夜景を眺め続けた1時間。

(私の帰る時間がなかったら、もう1時間続いたかも)


水族館。

暗い通路、明るい水槽。そのコントラストの中で、何度か悟と手を繋ぎかけた。

浜辺で少し座って話した時、泳ぎに来た時のことを聞いた。

水着はビキニだったって…

悟の家においてあるらしい。

「だから、夏になったらいつでも大丈夫だよ」と言われた。

…無理。


そんなことを書き留めた物語もページが増えた。

晩ご飯の前に帰るのは変わらなかったけど、その間に、かなり二人の距離は近付いた。
だからこそ、何度か彼と唇を寄せかけたことがあった。

でも、私はその度に、ごまかした。

一度そうしてしまえば、もう戻れないと思っていた。

逆に、悟はそれであの頃に戻れると思っているはずだけど、彼はそれに合わせてくれた。

そんな微妙な距離感の日々だった。
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