溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


「それはどうも。しかし成瀬さんこそ、すごいのでは?」

「え?」


きょとんと目を瞬かせる彼に、俺は自ら話の核心に触れた。


「こうして俺に会いに来たのは、夢を叶えたら彼女を迎えに行くという約束を果たすためでしょう? つまりあなたの所属するバンドは、念願のデビューが決まったということだ」


平然と話しながらも、胸の奥が軋んだ音を立てていた。

薄々、わかってはいたけれど……俺は、一心に夢を追いかけ見事実現させたこの男に、嫉妬しているのだ。

自分自身はまだ夢を追う途中であり、それどころか一度は挫折した経験が、大きなコンプレックスとなっているから。


「まあ、だいたい合ってますけど……いいんですか? 俺、迎えに行っちゃって」


呑気な口調で問いかけられ、何と答えればいいのか戸惑う。成瀬はもっと強気に彼女を奪いに来るのだとばかり思っていたから、先ほどから繰り広げられるのんびりとした会話に、調子が狂ってしまう。

でも、どちらにしろ俺には……本心を話すつもりなどない。


「……どうぞ、ご自由に」

「えっ」


ぎょっとしたように目を見開く成瀬。彼は彼で、俺に“彼女は渡さない”といった宣戦布告をされるとでも予想していたのだろう。

俺だって、そうできたならどんなにいいか……。


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