溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


モニターに映るのは、四人組バンド『ロッテンアップルズ』。

春にデビューした彼らは飛ぶ鳥を落とす勢いで若者の人気を獲得し、デビューから今までのわずかな間でその名を全国にとどろかせた。

地元でもすっかり有名人で、メンバーである理一と別れたことを両親に報告するとかなり驚かれたし“勿体ないことを……!”なんて不本意に嘆かれたりもした。

まあ、新しい恋人が大企業の御曹司だと知るやいなや、手のひらを返したように根掘り葉掘り聞かれたけど……。


「じゃあ、そろそろ上行こう?」

「ああ」


気を取り直したように再び歩き出し、エレベーターで一般文芸のある三階に上がる。そして売り場に入ってすぐ、目的のものはすぐ見つかった。

店内で最も目も目立つ『注目の本』コーナーの一角に平積みにされた、桜色の表紙。

そのタイトルは、【きみがペットから恋人になった日】。作者名は【REN】で、言わずもがな、私の恋人甲斐蓮人のペンネームだ。

彼は海外出張前にほぼ出来上がっていた原稿をマレーシアの地で完成させ、恋愛小説向けの文学賞に応募したのだ。

そして、念願の大賞を受賞し、こうして出版される運びとなった。特に若い女性に受けていて、蓮人の話によると、ドラマ化の打診もあるんだとか。


「店員さんも、まさかこの話のモデルになったふたりがこの本を見に来ただなんてきっと思ってないよ」

「まぁそうだろうな。つーか気づかれたらお前だって恥ずかしいだろ」

「……言われてみれば」


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