溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


何を隠そう、この本に描かれているのは、八割がた私たちの恋愛そのもの。目の前に飾られているポップでも『作者の恋愛体験に基づく半自伝的小説』と宣伝されている。

中でも恥ずかしいのは羽田のホテルで実際にあったベッドシーンの再現で、蓮人の作品ならば全部読もうと決意したにもかかわらず、詳細な描写に耐えられずそこだけ一気に読み飛ばしてしまったくらいだ。

とはいえ、こうして本屋さんに並んでいるのを見るのは、やっぱり感慨深い。

今日は蓮人も一緒だからなおさらうれしいな、と上機嫌になりながら、「じゃあそろそろ帰ろうか」と踵を返した時。


「……実はな、続編を書かないかという話があるんだ」


未だ売り場にとどまり、桜色の表紙を撫でながら、蓮人がふとそんなことを告白した。


「続編?」


それはきっと良いニュースなんだろうけど……この本の中で私たちはめでたく結ばれたわけだから、これ以上何を書くっていうの?と不思議に思って彼を見つめる。


「内容は自由にしていいと言われているが、俺の中ではだいたい決まってて……でもそれを書くには、お前の意思も確認しないといけなくてな」

「……うん。で、その内容って?」


別に私は、蓮人にならどう書かれても構わないけど……。そんな軽い気持ちで彼からの返事を待っていた私の耳に、驚くべき言葉が飛び込んでくる。


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