溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


防犯性に長けていそうな重厚なドアから中に入ると、甲斐がひと通り部屋を案内してくれた。

リビングダイニングにキッチン、寝室、バスルーム……そのどれもが広く新築のようにキレイで、あまり生活感がない。

モノトーンやシルバー系のインテリアが多いから、余計に無機質な感じがするのかもしれない。

しかし、最後に案内された部屋だけは、他の部屋とまったく違う雰囲気だった。


「……何この部屋。本だらけ。漫喫みたい」


部屋の中央の窓際に、アンティーク調の木製デスクがひとつ。しかしそんなものより、部屋全体を占領している、書物の数々に目を奪われた。

甲斐の身長よりも高い本棚が、壁という壁に並んでいるから、文字通り本に囲まれた部屋だ。


「せめて図書館と言え。漫画はひとつもない」

「えっ。これ、全部文字だけの本なの!? ……なんか頭痛くなってきた。全部で何冊あるのこれ」

「ここにあるだけで三千。あと、物入れにしまってあるの入れたら五千いくかもな」


私は自慢じゃないけど、本といったら漫画か雑誌か、あるいは節約料理のレシピ本(主に立ち読み)にしか触れたことがない。

そんな、活字なんて縁のない人生を送ってきた私には五千冊なんて途方もない数字過ぎて、ただ「へえ……」と頷くことしかできない。

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