溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


「なんだ、本は苦手か?」


反応の薄い私に、甲斐が尋ねてくる。特に嫌味っぽい口調でもないので、素直に答える。


「イエス。アイドゥー」


甲斐はブッと吹き出し、それから気が抜けたような笑みをこぼした。


「……英語も苦手、と。まぁ本なんかに興味ない方が俺としては気が楽だけどな」

「なんで?」


私の問いかけには答えず、甲斐は窓際を背にしたように置かれている大きな机に向かった。

長身をかがめて机の上にあるパソコンに触れ、画面上の何かを目で追っていた。

しかし一分もたたないうちに目を伏せ、姿勢を元に戻すとそっけなく言った。


「ペットは知らなくていいことだ」


……またそれかい。いいですよ別に、知りたくもないし。


「そーですか。じゃあ早くこの部屋出ましょう、文字に酔っちゃう」

「……ひと文字も読んでないくせによく言うよ」


そんなやりとりをしながら部屋を出て、今度はリビングに移動して、ソファに腰を落ち着けた。

私は二人掛けの広い方、そして甲斐はこの家の主らしく、一人用の高級感あふれるソファに足を組んで座る。

そういえばこれ、甲斐が“固い”って言ってたソファだよね。

……でもそんな固くないじゃん。かといって無駄に柔らかくもなく、最高の座り心地。

前の家で使ってたせんべい布団と大違いだ。ずっとここに座っていたい……。


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