溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


「おー、すごいすごい。なかなか身軽だなお前」


カラフルな素材でつくられたアスレチック遊具を難なくこなしていく私に、甲斐が地上からぱちぱち拍手を送る。いちおう、呆れられてはいないみたいだ。


「でしょ? じゃあ最後はこのすべり棒で……」

「お前、スカートなのにそれ平気か?」

「大丈夫大丈夫!」


自信満々に答えて、銀の棒に体ごとつかまる。そして子どもの頃のように、このままつつ~っと下に行けるはず……と、思ったのだけど。

その時ふと、三メートルほど下の地面を見てしまったのがいけなかったらしい。急に、高い場所にいることへの恐怖が襲ってきて、私は棒にしがみついたまま動けなくなってしまった。

うそ。子どもの頃はこれより高い木に登っても怖くなんてなかったのに……!


「稀華?」


異変を察知した甲斐が、私のそばまで近づいてくる。私は恥を忍んで、正直に告白した。


「こ、怖くて、降りられなくなっちゃった……」

「馬鹿。……ったく、調子に乗るからだ」


やれやれという調子で呟いた彼だけど、こちらに両手を伸ばしてくれる。でも、その手をつかむために棒から離れる事すら怖い。


「ど……どーすれば」

「どうしたっていいよ。無様に落ちても受け止めてやるから」


無様はいやだけど……どうせ誰も見てないし、いつまでもぶら下がってるわけにもいかないよね。


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