溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


始めに片手だけを甲斐の方に伸ばして、それをつかんでもらった後で私は意を決して体の力を抜く。

斜め下に落下する私を甲斐はすぐにつかまえて、しっかりと抱き留めてくれた。

ふわっと鼻をかすめたスパイシーな香りが、恐怖とは違う胸の動揺を誘った。


「ご、ごめん……ありがとう。お、降りるね」


助けられたことにはホッとしたけど、子どものように抱っこされてることが気恥ずかしくて、即座にそう言った私。

けれど、ストンと地面に足をつけたその瞬間、さらなる恥ずかしさが私を待っていた。


「最初に許可した俺が言うのもなんだけど、今度からスカートで激しい遊び禁止な」

「え。なんで……」

「……完全に見えてたぞ。特に最後の棒のところ」


言いにくそうにぼそぼそ注意されたのは、オトナ女子にあるまじき情けない醜態。

み、見えてたって……まさか、色気のないコンビニパンツのこと……?


「失礼しましたっ! お見苦しいものを……」

「そういう意味じゃねえよ。無防備もたいがいにしねえと、こっちも“飼い主”じゃいられなくなるってこと」


細められた甲斐の瞳は厳しく、怒らせてしまったのかと不安になる。

飼い主じゃいられなくなるって……もしかして、私を捨てちゃうってこと!?


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