もう泣いてもいいよね
私は部屋に戻った。

クローゼットにしまってあった段ボール箱を開けた。

中身を取り出す。

あった。

美平小学校卒業アルバム。


ゆっくり開く。

校長の挨拶。

担任の教師たち。

そして、16名の卒業生。

一人一人の顔写真と名前を見る。


マ行の森川香澄が一番最後にいた。


「…あれ?」

その次のはずの大和武尊はいなかった。


小学校の頃までのタケルの記憶が、何となくある。

名簿に名前がないということは、卒業の時にはいなかったということだ。

そういえば、タケルのじっちゃんのことも、その頃から記憶がない。

転校したんだっけ…?



卒業アルバムをめくった。

校内や学校生活のスナップが載っている。


「あれ?」


香澄と私は写っているが、タケルはどこにも写っていない。


どうして?


卒業まで一緒じゃなかったとしても、1年からのスナップが載っているのに、なんでタケルが写っていないのだろう?


私はタケルと遊んでいた。


そのタケルと遊んだ記憶は、いったい何?


私には、本当にタケルという友達がいたのか、自分の記憶に確信が持てなくなってきた…



森川村へ帰れば何かわかるかもしれないけど…
 
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