もう泣いてもいいよね
ふと、母の声が聞こえたような気がした。

周りを見るが、部屋の中は私だけだ。


何かの知らせ…?

虫の知らせっていうやつ?


でも、実家ではここの連絡先を知っている。

何かあったら、毎日誰かが買い物する雑貨屋だ、村の誰かから連絡はあるだろう。

…私からは、連絡できない。


その時、チャイムが鳴ったような気がした。


誰だろう?

真奈美だろうか…


「どなたですか?」


返事がなかった。

覗き穴から見てみたが誰もいない。

そっとドアを開けてみた。

やっぱり誰もいなかった。


気のせいか…


部屋に戻りアルバムを片付けた。


ピンポーン。

今度ははっきりとチャイムが鳴った。


「はい?」

ドア越しに耳をすませた。


「皆美」


え?



タケルの声?


それも子供の頃の?


「誰?」

ドア越しに聞いてみた。

「タケルだよ。覚えてないか?」

今度は、はっきりと聞こえた。

ちゃんと大人の声だった。

なんで!?タケルが!?

慌てて開けると見たこともない若い男性が立っていた。


「よお。久しぶり」

「…タケル…なの?」

よく見ると、どことなく面影がある。

「本当にタケルなの?」

「おお、すっごく久しぶりだからわかんないか?」

「タケル、なんで今ここに…」

私は頭が混乱した。


「まあ、とにかく入れてくれよ?ここで立ち話ってのもさ」

「あ、うん…」
 
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