夢に溺れて
1 私と夢

夢を見ない。

夜、真っ暗な空から身を映し出すための灯りを消した。
何も見えない中、慣れた足取りでベッドまで向かい、横になる。目を閉じてただの闇を感じると何かを考える間もなく深い眠りについた。そして何も感じず朝を迎える。
これがいつもの流れ。私は夢を見ない。

ベッドから降りて、服を着替えてご飯を食べる。その間ぼんやりと「夢」について考えていた。
そういえば、先生が夢と睡眠の話を授業中にしていたのを思い出した。確か「レム睡眠」とか、そんな話。
パソコンで調べようかと思いかけて、やめた。学校に行く準備をしよう。

学校について、教室に入ると女子達が盛り上がっていた。最近彼女達の中では占いに夢中らしい。片想い中の子が好きな人との相性を見たり、誰かが持ってきたトランプを使って、一日の運勢を占ってみたり…夢占いをしてみたり。
今は夢占いが一番ブームみたいで、みんな毎朝その日見た夢の意味を調べていた。
私はそれをちらっとだけ見て廊下側の自分の席につく。

その時聞いたことのない声が聞こえた。

「君はあの中に混ざらないの?」

バッと声のある廊下を見る。
けれどそこには誰もいなかった。
何事も無かったかのように前を向く。そして誰にも聞こえない声で呟いた。

「…仕方ないの、私は夢を見ないんだから」
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop