黄金のラドゥール
げほげほとひどく咳き込む声だけが響く。




神聖な水鏡ゆえ、神官らでさえ許可なく立ち入ってはいけない。
すでに到着しているユンハも状況を見守る。



コウジュンは、皇太子リジュンの眉が僅かに寄せられたことを見逃さなかった。

コウジュンは何かがおかしいと感じた。
皇太子リジュンはこれまで何とかして、コウジュンを失脚させようとしていた。、
その度、回避することができていたのだが、今回の儀式において、皇太子自ら儀式の執行役を名乗り出た。皇太子が儀式の執行を執り行うことは前例のないことだったが、国王は儀式の一切を皇太子に一任するとした。

皇太子は間違いなくこの儀式で、コウジュンを恐らくどこか辺境の地へ飛ばそうと目論んでいるものと思われた。

皇太子の策に、今回ばかりは逃れられないかと半ば諦めかけていた。


しかし、コウジュンは思った。
あの皇太子の慌てぶり。

『何かがおかしい。これは皇太子の策ではない』直観だがそう感じた。





「神官長さま、

天からのラドゥールさまは大丈夫でしょうか??!」


「きゃぁ、、!」

「ぁぁ、ラドゥールさま、、っ!!」

神官らの悲鳴が重なった。


女の姿が水面から消えた。
皇太子も身を乗り出すように伸び上がった。


『皇太子の策ではない。』
コウジュンの瞳に小さな光が灯る。

「ユンハ!! その方をお助けしろ!」




『ならばこれはーーー、、』


コウジュンの瞳にもう諦めの色は映っていない。

『私が生き残る道に違いない。』
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