沢山の初めて
『帰ってください。』

「イヤだ!雛菊、ワガママ言って拗ねてごめんっ!」

ワガママだとわかってたのね。

旦那様が怒ってた1週間は、私の出張に男の秘書が同行することに腹をたてたんだったわ。

「秘書でも…男だったのがイヤだったんだ!」

スピーカーでも必死さがすごいな。

『秘書だけど…イトコよ?』

「へっ?イトコ?!」

マヌケな声が聞こえる。

力が抜けるんだけど。

『私はイトコの秘書と仕事。あなたは私の会社に乗り込んできた女の人と会っていた…。対比するには差がありすぎて、話しにならないわね。』

「雛菊っ?!なんで知ってっ…。」

『だから、ウルサイ。大声出さないで。疲れてるの。落ち着くまで別居しましょう。どんな理由を言われても会っていた事実は消えないし、今はあなたを信用できない。それに…あなたを〝旦那様〟とも〝零〟とも呼べないわ。帰ってください。』

そうして、私は何にも聞かずにインターフォンの通話オフ。

次、鳴らしたら電源オフしてやる。

まぁ、鳴ることはもうなかったけれど。

また愛人さんが会社に乗り込んでくる事態になる前に、さっさと別れておけばよかったのかしら?

バカな男はどこまでいっても、バカなのか。

疲れ過ぎて思考がうまくまとまらない。

よし。

お風呂入ってさっさと寝よう。

オヤスミナサイ。
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