嘘つきな恋人
剛とさくらさんがあっけに取られた顔をして、

「冗談は止めろ。美鈴はそんな事をするはずがない。」と剛が呟くと、

「そんな事をしないはずの恋人にそんな事をさせたのはおまえだろ。
美鈴が暗い中で1人で雨に濡れて泣いてるのを
そそのかして連れて帰った。
俺はあんたと別れさせてやるって約束したんだ。」

「…そうなのか…美鈴…」

と聞かれ、

「もう、おしまいにしたい。」と私は剛に顔を向ける。

「…別に俺は美鈴が1回ぐらい他の男と寝たって気にしない。
…美鈴も気にするな。俺が悪かったんだ。
俺のそばにいてくれ。すぐに結婚して、子どもも作ろう。
もう、決して他の女は見ない。」

今まで余裕のあった剛が顔を歪めて私の瞳を真剣に見ている。

「もう、遅いよ。
私は剛じゃない人の手を選んだ。
もう元にもどれない。」

「美鈴、嘘だろ。
俺を捨てるのか?3年間ずっと一緒にいたのに…」と剛が小さな声で言うと、

「先に手を離したのはおまえだ。」と三島さんがハッキリ言い捨てた。


剛はゆらりと立ち上がり、

「今日は帰る。…その男と付き合うのか?」と私を見たので、

「いいえ。」と私が言うと、

「ひでえ。でも、美鈴はフリーになったね。
美鈴、頑張るから、俺を見てよ。」と三島さんが私に笑いかける。

この状況で、何を言ってるかな?
変なオトコだ。


「…そうか、美鈴、
…俺も頑張ればいいんだな。
美鈴はフリーなんだから…
昔みたいに…」
とふと、気づいたように剛も振り返る。

え?

「おまえは頑張るなよ。」と三島さんが剛にしかめ面をする。

「…後藤先生、振られたばっかりでしょ。」とさくらさんが呆れた声をだす。

「いいだろ。俺はこれから頑張って
また、美鈴に好きになってもらえるようにするよ。」

と剛は私にすっきりとした顔で、笑いかけ、
振り返らずに手を振って出て行ってしまった。

…嘘お?
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