嘘つきな恋人
リビングの大きな窓の右手に大きく見える花火はとても綺麗だ。
20人ほど集まっている人達から
口々に歓声が上がっている。

「美鈴ちゃん、久しぶり。」
と声をかけてくれたのは少しお腹が目立ってきた
3歳年上の小児科の看護師の先輩だった芦沢 麦(あしざわ むぎ)さんだ。
さくらさんの同期で、親友。
小さくて可愛らしいので、『むぎちゃん先輩』と後輩達は呼んでいた。

7歳年上の実の兄であるDragonのシェフの大河さんの親友で、
小児科医になった芦沢 斗真(あしざわ とうま)先生と(私達の勤める総合病院に赴任して来て、すぐに小児の専門病院に引き抜かれ転勤してしまった。麦さんの許婚だ。)
麦さんのご実家、Dragonと同じ駅にある『あおい小児科医』を今年の4月から継ぐことになって、
(ややこしい。)
麦さんは今年の3月に退職した。
仕事を辞めてすぐに妊娠したのだけど、
結構、悪阻がキツくて、やっと外に出られる様になったみたいだ。


「麦さん、順調ですか?
Dragonで会わなくなったから、チョット心配してたんですよ。
でも、さくらさんに聞いたら、大丈夫そうだって言ってたから、
また、会えるのを楽しみにしてたんです。」とそっと抱きつくと、
もう平気だよー。それより、美鈴ちゃんの方が大変だったんでしょ。
桜が心配してたけど…今回は自分の出番はなさそうだって笑ってたよ。」

とくすんと笑う。

「麦ちゃん先輩、さくらさんに
もっと、前に出てくださいって言ってくださいよ。
なんだか、思いがけない方向に向かいそうで、
…どうしたらいいかわからないんです。」と下を向くと、

「なあんだ。新しいオトコとの出会いに戸惑っているんだね。」と麦さんが優しい声を出す。

「大丈夫。自分の気持ちに素直になって。」と私の頭を撫でる。

さくらさんと麦さんがは性格が違うけれど、
どちらの先輩もとても優しい。
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