【完】こちら王宮学園ロイヤル部
ルノくん曰く、彼等の祖母がヨーロッパ出身の人らしく。
クォーターだから、ブラウンにグレーがかった瞳なんだと言っていた。そして、「ルアのほうがブラウンの色素が薄いので綺麗なグレーですよ」とも。
残念ながらいま目を閉じているから、その瞳を見ることはできないけれど。
ルノくんのブラウンアッシュよりも、すこし色素の薄いミルクティーアッシュの髪。
なんか……なんて、いうか。
ただ寝ているだけなのに、不思議な雰囲気が漂う。
「、」
じっと見つめているだけで、その雰囲気に呑まれてしまいそうになって。
ふっと排他的に息を吐き出し、ベッドから近くも遠くもない距離にある椅子に腰掛けた。
存在感のあるベッドの隣に並ぶのは、大きなモニターが3台と、小さなモニターが2台。
そのうち大きなモニター2台にはキーボードがついていて、どうやらモニターの大きいデスクトップパソコンらしい。
小さなモニターの片方は、4分割されてどこかの映像がそれぞれうつっていた。
ひとつは、C棟の入り口にあるあの防犯カメラだ。
なんだか息苦しい部屋だなと思う。
カーテンが閉まっていて薄暗いのも、電子機器が大量に並んでいるのも。
スマホやパソコンは人並みに使えるけれど、ハイテクなものはわたしには向いてないのかもしれないと思いながら、持ってきた文庫本の表紙を意味なく眺めたあと。
縦に並ぶ明朝体を、しばらく追う。
シンと、静まった部屋。
わたしがページをめくる、紙の擦れる音と。
起動している電子機器の、重い音。
……そして。
「本を読むのが、すきなの?」
色で表せば重く黒いこの空間にはそぐわない、透明な声。
ばっと小説から顔を上げれば、現実に引き戻される。
だけどそれもまた、現実じゃないみたいに。
ルノくんの言っていた通り綺麗なグレーの瞳を細めて、彼はわたしに微笑んだ。