【完】こちら王宮学園ロイヤル部



初対面なのに、そう思うほど。

その微笑みは優しくて、手を伸ばして、彼の白い頬に触れる。高熱があるとは思えないほど冷たい頰に、わたしの手を介して温度が伝わる。



調和するって、こういうことだと思った。



「熱、あるんじゃ……」



「ああ……椛が、言ってたの?

さっきまでは高熱だったかもしれないけど、もうへいきだよ。元の体温が低いから、すこし熱があるだけで、椛はうるさいよね」



「や、でも、」



熱があるなら寝なきゃ、と。

頰にふれていた手を額にあてれば、たしかに熱はないように思う。……ほんとにだいじょうぶかな。



面倒見ててって言われたのに、さらに熱が上がってました……とか、シャレにならないし。

ふつふつと考え込んでいたらそれが読めてしまったようで、ルアくんはふっと笑った。




「ほんとうに、へいきだよ。

ルノの方も、きっと、そろそろ熱下がると思う」



「え、」



「ぼくと、ルノ、共鳴してるところがあるから。

熱を出すのもおなじとき。何か大きな感情を感じ取ったときなんかも、共鳴しやすいんだよ」



共鳴、というのは、テレパシー的なものだろうか。

ルノくんよりも、ルアくんのほうが、共鳴を感じ取りやすいらしい。それがどういうものなのか、わたしにはわからないけれど。



「椛がさっき、ゼリー買ってきてくれたんだって。

たくさんあるみたいだから、いっしょにたべよう?」



「あ、うん……」



なんだか、ペースにのまれてしまう。

猫みたいなヤツ、と言っていた椛の言葉を思い出して、たしかに猫っぽいかもしれないと綺麗な彼の表情を見つめた。



< 112 / 655 >

この作品をシェア

pagetop