【完】こちら王宮学園ロイヤル部
"安全とはいえない"。
その一言で、部屋の中はシンと静まり返ってしまう。
ルアがいつもと変わらないテンポで優しく告げてくれたから軽減されたそれも、じわじわと胸を侵食するうちに重苦しいものへと変化する。
南々先輩が俺とルアをつないでくれた言葉は、とても優しいもので。
余計な感情をナシに、ただただ先輩のことを信じていたいと思うのは俺の個人的な意見だ。
ルアが「ぼく個人としては」と前置きしたのと同じこと。
「……そーいや、アイツ、」
「なに? 莉央」
「……いや。ただの勘違いかもしれねーし、」
「勘違いならそれでいいじゃない。
もしも、の時は困るの。ちゃんと言って、莉央」
夕さんがそう追い打ちをかければ、莉央さんは仕方なさそうに口を開く。
「俺があいつと『Juliet』に行った日の帰りな、」と。つまり莉央さんが南々先輩と急に距離を詰めた、あの日のことだ。
「あいつ……
『離れるのは苦手じゃない』って言ってたんだよ」
「、」
「『いつまでもずるずるとそばにいるよりも、いっそ引き裂かれた方が未練を残さなくて済む』。
『人の感情は、社会で生きていくために案外いろんなものをあきらめられるようにできてる』って」
それじゃあまるで、自分がいろんなものを散々あきらめてきたような口ぶりだ。
それに。……離れるのは、苦手じゃないって。
俺らの味方か、それとも敵か。そんな風に白黒で物事を捉えたくはないけれど、そうしなければこの学校の均衡が崩れてしまうことは、この組織に入ってすぐに気づいた。──呑まれたら、最後。
それは各界に名を轟かせる八王子の後継としても言えることだった。
考えれば考えるほど、思考は悪い方へと導かれていく。
南々先輩。……あなたは一体、何者なんですか。