【完】こちら王宮学園ロイヤル部
さすがエリート……と、隣に座るいつみ先輩を思わずジッと見つめる。
彼の視線はずっと書類に向けられていて、そのあまりに真剣さに、わたしの視線に気づいてないんじゃないかと、思ったタイミングで。
「あんまり熱視線送ってくるなら、
"キスしても良い"の意味だって捉えるからな」
「……ポジティブ思考すぎませんか」
さらりと甘い声で言ってくるから、この人は本当にタチが悪い。
しかも「キス」と言われたせいで昨日迫られたことを唐突に思い出して、頰がじわじわと熱を帯びていく気がする。熱い。
「……嫌とは言わないんだな」
「え?」
「キス」
見つめ合って、数秒。
その言葉の意味を、真剣に考え込んだわたしは。弾けるような羞恥心とともに、「なっ」と声にならない声を上げた。
「いや、その、それは……っ」
「なにひとりで焦ってるんだ」
「誰のせいだと思ってるんですか!?」
嫌とか嫌じゃないとか、そういうことじゃない。
そりゃあ、この人がロイヤル部なんてものを設立して探し求めるほど、わたしのことを想ってくれてるんだとしたら、すごくうれしいけど。
「そういう反応されると、いじめたくなる」
うん、前言撤回。この人とんでもない。
だけど綺麗に口角を上げる姿は誰もを魅了してしまうほど綺麗で、なんだか誘われているような気分になって、そわそわする。