【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「……ねえ、ナナ」
「……ん?」
耳元にくちびるを寄せてきた夕陽。
それから囁くような声で、ぼそぼそとわたしにだけ聞こえるように話す。わたしたちの距離感をすっかり見慣れたのか、わたしたちの様子は誰も気にしていないけど。
「……好きなの?」
「え?」
「……あいつのこと」
さっきからドアの方気にしてるよね?と。
図星を指されて、口をつぐんだ。
態度に出ないように、してたのに。
無意識にいつみ先輩の方へと意識が向いてしまう。
だって、さっき。……キス、しちゃった、し。
受け入れておいてなんだけど、平然としてろって方が無理だ。
「……好きじゃないよ」
「……ふーん?」
これは疑ってる時の目だな、と夕陽を見て思う。
けれど夕陽がそれ以上何か聞いてくることはなくて。さらさらな黒髪を撫でてあげると、とても機嫌良さそうに笑ってくれた。
……ルノにバレて、夕陽には疑われるなんて。
もっとしっかり隠さなきゃ、いつか本人に気付かれてしまうかもしれない。
それは困る。気持ちは置いていかなきゃいけないんだから。持っていくのはアルバムだけでいい。
何があっても先輩には絶対に知られないようにしよう、と。ひそかに心の中で誓った。