【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「でもまあ、役員になったら春休みに駆り出されるけどねえ」
「マジで俺ら休み与えられてなさすぎじゃね?
まー俺はC棟に住んでるから全然いーけどよ」
「……そういえば、南々先輩。
夕陽は王学無事に受かったんですか?」
「話聞けよコラ。
呉羽は無事に特進受かったって椛が言ってたじゃねーか」
「……夕陽も無事に受かったみたいよ、芸能科」
ぼそぼそと、5人で会話する。
帰国してから夕陽に帰ってきた旨を伝えるための連絡を入れたのだけれど、「そ」とたった一言で済まされた。
合格したって連絡をくれたときに再度電話してみたら、「泣いた俺が馬鹿みたいじゃん」と文句を言われたし。
どうやらあっさり帰国したことに拗ねているらしい。……わたしもまさか冬休み中にもどることになるなんて、夢にも思ってなかったけど。
「新しい生徒会長って、今日発表されるんでしょう?」
「そうそ〜。
ラストステージが終わった後に、元生徒会長から新しい生徒会長に新品のバッジが渡されんだよ〜」
卒業式のあとにラストステージがあったり、新しい生徒会長の発表があったり、王学はなにかとイベントが多い。
この学校だからこそ、できることだろうけど。
寂しさを掻き消すように話をしていたら、不意にドーム内にそろそろ卒業生が入場するというアナウンスがかかって、ぴたりと静かになる。
追いやったはずの寂しさが、水面で波紋を広げるようにじわじわと空気を侵食した。
「、」
物悲しさに口を閉ざして居住まいを正すと、それから間もなくして卒業生が入場する。
あまりの人数で、入場した時に見つけられた先輩ふたりの姿も、席につけば見えなくなってしまった。
プログラムが滞りなく進行していく間、
思考を占めるのは転校してきてからのこと。