【完】こちら王宮学園ロイヤル部
◆
「南々先輩」
ちょっとだけ角張ったような声に、名前を呼ばれる。
それがルノのものだと気付いて振り返るよりも早く、後ろからぎゅうっと抱きすくめられて。
「この時期に屋上にいたら、風邪ひきますよ」
「大丈夫よ。わたしそこまで弱くないから」
「体育祭のあと体調崩してましたよね」
「……、
ルノもルアと一緒に体調崩してたじゃないの」
実りのない話をしながら言い訳がましく言ってみれば、彼は吹き出すように小さく笑う。
すっかり角のなくなった彼の声を聞いて、緊張してたのかな、とぼんやり思った。
「まあ。
こうやって先輩のこと抱きしめていれば、先輩は風邪ひかなくて済むと思いますよ」
「……うん。
でもそれだと、ルノが風邪ひいちゃう」
くるっと、腕の中で身をよじる。
身体を反転させて、抱きしめてくれる彼の背中に腕を回して抱きしめ返した。
「こうやって抱き合ってたら、
ルノも風邪ひかなくて済むでしょ?」
さすがにちょっと恥ずかしいけど。
いい匂いする、と、彼の首筋に顔を寄せていたら。なぜか急に彼が黙り込んでしまったから、思わず深く考えずに顔を上げた。
「え」
ちょっと待って。
……ルノさん、顔真っ赤なんですけど。