【完】こちら王宮学園ロイヤル部
グレーがかったブラウンの瞳が、ゆらゆらと不安定に揺らめく。
お世辞にも晴れとは言えない薄暗い空の色を受けても、濁ることなく澄んだそれは。
「キス、していいですか?」
甘やかに細められて、危うげな色香を放った。
なにその色気。なにその甘えたな態度。
「……だめって、言ったら?」
あまりにもまっすぐに向けられる熱視線が恥ずかしくて、逃げる気もないのにそう言ってみる。
付き合ってからというもの、なんだかこういう甘酸っぱいやり取りに慣れなくて、今みたいに何度か話を逸らしてしまっていた。
「そうですね……
恥ずかしいだけなら、普通にキスしますけど、」
外に出てしまって冷えたのか、ひんやりつめたい手が頰に添えられる。
歳は下でも身長はわたしより高い。そろりと視線を持ち上げたわたしに、彼はまた色香を放つようにくつりと喉で笑ってみせた。
「焦らし、なんだとしたら。
……あとでお仕置きさせてくださいね?」
「っ、」
ぶわっと、顔が一気に赤くなったのが言われなくてもわかった。
まって。いや、なにに焦ってるのかは自分でもわからないけど、とりあえずちょっと待って。
「な、に言って」
「嫌ですか?」
嫌ですか?じゃない。
さっきまでルノさん顔赤くしてたんじゃなかったの?え?あのピュアなプリンスは一体何処へ?
っていうか、お仕置きってなに。
そんな不穏なワードを出されて、「嫌じゃない」って言う子がいるなら見てみたい。いや、相手がルノなら、少なからず女の子は「いい」って言うかもしれないけど。