シンデレラの魔法は解けない
「あの……勘違いかもしれません」
だけど、勘違いだとは思えない。
あたしは震える声で、平さんに告げた。
「誰かに尾けられていました」
「……え?」
平さんはそう言って、辺りを見回す。
あたしはようやく顔を上げ、平さんを見た。
そして、びっくりした。
だって……
そこにいるのは、いつものオトナかっこいい平さんだと思っていたのに、今日の平さんはまたサイズの合っていない黒いスウェットに、グレーのパーカーを着ていたから。
おまけにその素敵な前髪を、ゴムでちょんまげみたいに結っている。