シンデレラの魔法は解けない
彼はいつも以上に素敵だった。
着ているのはスーツなのに、洗練されていてお洒落で。
白を基調にした模様の入ったネクタイや、ブレスレット、そしてベルトという小物がそれを引き立てている。
スパイラルパーマの髪は色気すらあり、その髪から覗く瞳はやっぱり優しげで。
恥ずかしい格好のあたしは赤くなって下を向く。
そんなあたしを卑下することなんてせず、
「今日は藍ちゃんをお姫様にしてあげるね」
平さんは笑顔で言う。
「お姫様……」
それはいけないよ。
今日は麻友の結婚式だ。
いくら裏切り者だとしても、麻友より目立つことは避けたい。