染 光 ハナビ





「………あ」


気が付けば、最後の一本になっていた。



心では焦り始めているのに
体は冷静に火を灯している。




「最後、だな」


「最後、だね」




じめじめとした夏の暑さではない汗が
じわりと頬を伝う。




…ついに、


想いを伝えるほんの一歩手前まで
来てしまった。






──パチパチ。


──じりじり。






隣を見ると、染谷くんが笑ってる。


「線香花火しててそんなに真剣なの…ぴっかしかいないよ」


くすくすと目を細めて笑ってる。




「あ」




そして、染谷くんの最後の線香花火が
ぽとりと音を立てて落ちていく。


火玉がじわり、地面と繋がった。




残された私の線香花火。




じっと火玉を見つめて
必死に呼吸を整える。




心地よい風が吹く。




火花が散っていく。




夏が終わっていく。





夏が、終わっていく。















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