悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
「佑都、からかうのは止めなさい」
「楓は優しいなぁ」
佑都……楓……。
「お前ら、仕事中だ、イチャイチャは終了後に……」と時計を見、あっ、そう、君たちは終了を迎えていたのだね、と二人を無視し仕事に戻ろうとするが、そうは問屋が卸さなかった。
「で? どういう心境で変身したのかなぁ、矢崎課長は?」
白鳥、しつこい!
逆に僕の方が訊きたい。
「――僕の何が変わったのだ?」
「あらっ、ご自分で気付きません? 何て奥ゆかしいの! 更に好感度アップです!」
白鳥に訊ねたのに……何故か大野木がキャッキャッと歓喜する。
「――好感度ぉ! 楓、俺よりこいつの方がいいのか!」
白鳥がギッと鋭利な視線を寄越す。
何故、僕を睨む。言ったのは大野木だ。
摂氏零度の瞳でこいつの部下が何人倒れたことか、まぁ、僕には効かないが。
「内輪もめなら他所でやってくれ」
「本当、クールだわ」
大野木、これ以上僕を巻き込むな!
ウンザリしている横で、白鳥が怒り出す。
「こいつがクール? クールな男は俺だ」
まるで子供だ。
これが、普段、冷静沈着でカミソリのように鋭い白鳥課長だとは思えない。
全く、こいつこそ大変身だ。
但し、大野木に関してだけだけどな。