きっと今夜は雨・・・
 そして、次の日。

「ねぇ、私、昨日見ちゃったんだけれど、駅前のホテルのレストランから社長とその娘さんと清水さんが一緒に出てくるところ」

「え?ホント?じゃあ、いよいよ二人がつきあうのかな?」

「そうじゃない?だって、上手くいけば逆玉の輿よ」

 朝の更衣室での他の部署の人の話を耳にした。

「結婚までこぎ着けたら、将来はこの会社を継ぐことになるんでしょうね」

「逆玉かぁ。私たちは玉の輿に乗りたいよね」

「いつか、王子様が・・・なんてね」

 昨日、そんなことがあったなんて。

 週末も本当に出張かどうか疑ってしまう。

 一度疑い出したら、それはずっと引き続くはず。

 今できることは彼を信じること。

 気持ちが私の方に向いているのだったら、いい話でもそれに乗るような人ではない。

 それを信じるしかない。



 週末までは自分の仕事も忙しく、まったくといっていいほど、連絡がとれなかった。

「ねえ、最近元気ないじゃない。何かあった?」

「え?特に何もないよ」

 同じ課の同僚が声をかけてきたけれど、ごまかしておいた。

「もう夏バテか?ようし、みんなでパーッと飲みに行くか?」

「そうだな」

「そうだよ」

 1人で家で晩御飯を食べるよりもそのほうがいいと考えて、参加することにした。



「やだ、会社に忘れ物してきちゃった」

 駅前の居酒屋さんに入って、1時間ぐらいたった頃だろうか、一緒に飲んでいた同僚の子が突然声を上げた。

「何を忘れたの?」

「ロッカーにお弁当箱が入った紙袋ごと、置いてきちゃったみたい」
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