溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜

冷やっと室内の温度が下がったかのように、彼女達の表情が強張る。


「お忙しい中、失礼しました」


軽く頭を下げた緒方さんはドアを閉めて、私に初めて微笑んだ。


「釘は刺しておきましたが、何かあれば必ずおっしゃってくださいね」


彼女達を牽制する意味がわからないまま、とりあえず頷いておいた。


「社長が会食から戻られるのは、14時頃です。戻られたら企画課との打ち合わせとリゾート開発課と打ち合わせ、その後は都内のホテルへ行かれます…」


歩きながら本日の社長の予定をツラツラと述べていく緒方さんの後ろを歩きながら、今朝、訪れた通路だとキョロキョロとしていた。


「聞いていましたか?」


「…はい」


「あなたは秘書の資格をお持ちではないので、とりあえず私のアシスタントとしてサポートして頂きす。そのうち秘書検定を取って頂きたいのですが、社長がそれをお許しにならないと思うので、気持ちがあれば考えてみてください」


そうだよね…許すはずがない。
だって私は、あの男と奴隷契約を結んだのだから…


「私は、これから社長が戻られるまでにしなければならない仕事ができました。ですから、私の代わりにお願いしたい仕事をお話しします」


そう言って、社長室前でカードをかざすとガチャっと音が鳴り、ドアが開いた。


ドアを開き緒方さんが入って行く後に続くと、社長室と隣接する専用秘書室だった。


ドアを開ければノートパソコンを中央に鎮座させた広いデスクがあり、その後ろには高さのある本棚に分厚いファイルが隙間なく入っていた。


そして、入って右の壁側に社長室と繋がるドアがあるようだ。


「本棚の向こう側は給湯室になっています。お客様や社長室で打ち合わせをする際は、必ず飲み物をお願いします。社長が、お食事から戻られたらお茶を出してください。打ち合わせの度に飲み物を変えて出す事を忘れないでください。それから、社長が戻られるまでこちらの書類を整理して各ファイルに綴じていてください」


畑違いの場所と、書類の山に、はぁーと頷くだけで返事ができない。

「あっ、そうそう…こちらのドアは中からは簡単に開きますが、先ほどもご覧になられたように防犯上簡単に開きません。こちらのカードキーをお渡ししますから、出られ際は忘れないでお持ちくださいね」


「はい」


「では、よろしくお願いします」

そう言い緒方さんは、出て行かれた。
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