不埒な専務はおねだーりん

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「専務、そろそろお出かけの時間です」

執務室の扉をノックして役員会議で本社に行かなければならない篤典さんに声を掛ける。

「ああ。もうそんな時間か」

篤典さんはそう言ってパソコンを閉じると、外していた時計を左腕につけなおした。

さりげない仕草にグッとくる今日この頃である。

なにをやっても絵になるんだから、本当に……。

「明日は午前中から企画会議ですので、車の中で事前に資料に目を通して頂けますか?」

「わかった」

ハンガーに掛かっていたジャケットを取って篤典さんに羽織らせれば、どこからどうみても立派な専務の出来上がりである。

「かずさ」

篤典さんは目配せすると、私しか知らないであろうちょっと甘さを含んだ声で囁いた。


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