最後の恋のお相手は

鉄板ではとろけるような高級和牛に、新鮮な魚介類が焼かれ、甘みを感じるみずみずしい野菜サラダに舌鼓をうち、赤ワインで乾杯……。

あれ? 雄洋さん、車で迎えに来てくれたのに、赤ワインを飲んでいるし! もしかして、高級ホテルで一泊……とか!?

頭がクラクラしそうになるのは、赤ワインのアルコールのせいではない。夢のような一夜を過ごせるのではないか? という期待に胸が膨らむからだ。

「あの……赤ワインを飲んで大丈夫ですか?」

「車のこと?」

そうそう! まさか、飲酒運転をするはずはない。でも、さすがに泊まりですか? なんて、恥ずかしくて聞けない。

期待を込めた目でうなずいた。

「車は、運転手に任せる。郁美は、タクシーで送るから心配いらんよ?」

あ……。タクシー、ですか? ふたりでお泊まり。なんて、甘い時間を考えてしまった私は、恥ずかしさのあまり頬が急激に熱くなった。

「もしかして、期待していた?」

和牛ステーキを口に運びながら、涼しい顔をして雄洋さんが言った。

「え、あ、な、何を……」

フォークにトマトを刺したまま、目を泳がせる私。

「ごまかしたって、頬が真っ赤や」

肉食系の、いやらしい女と思われた? 雄洋さんにはそんなふうに思われたくないのに……背中にひと筋の汗。

「オレは、見た目と違って意外と紳士やで?」

そう言った雄洋さんに、笑顔はなかった。気を悪くさせたのかもしれない。

「あ……ご、ごめんなさい」

「謝らんでもいい。見た目が派手やし、誤解されても仕方がないわ」

雄洋さんは、しばらく無言で食べていた。私も勧められるまま、一緒に食べていたけれど、気を悪くさせてしまったことを申し訳なく思い、おいしいものがおいしく感じなかった。

「ごめん」

口を開いたかと思うと、突然謝った雄洋さん。びっくりして目を丸くする私の頭をそっと撫でた。

「食事が終わったら、帰ろう」




< 25 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop