最後の恋のお相手は
車は、超高層マンションの駐車場に入っていった。

雄洋さんの、自宅？ ドンドンと、胸を叩く鼓動に息苦しさを感じながら、車から降りた。

無口になる雄洋さんの背中に、そっと着いて行く。今日は手も繋がないし、エレベーターの中でも指一本、私に触れることはなかった。

重そうなドアを開けると、高級感溢れる空間が広がる。

カーテンを開けると、街の夜景が綺麗に見える、最上階の部屋。雄洋さんはひとり、この部屋に住んでいた。男のひとり暮らしとは思えないくらい綺麗な部屋は、まるで高級ホテルを思わせた。

「座って？」

「あ、はい……」

座り心地のいいソファに腰をおろしても、落ち着かないまま、部屋中にキョロキョロと視線を送った。

「今日は、ノンアルコールでいたいから。コーヒーでもいい？」

「あ、はい！ 私がいれます！」

コーヒーメーカーを用意する雄洋さんの後ろ姿に、慌てて立ち上がり、声をかけた。

「オレ、こう見えても、人をもてなすのが好きやねん」

振り向いて、笑顔でそう言われると、何もできなくなって、ソファに座りなおした。

胸を叩く鼓動は、ずっと鳴り止まなかった。

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